地域映画「まつもと日和」
1960年代から80年代懐かしさ溢れる映像の数々を軸に、蘇った記録を見る現在の家族や友人の語り、フィルムを元にアニメ制作をする中学生、幻の市歌の発掘と再生のストーリーが過去・現在・未来をつなぐ。
ノスタルジーだけでは終わらない、地域再生の新たな可能性に満ちた記念碑的作品。
カラー/73分/2023
監督:三好大輔
音楽:3日満月(権頭真由/佐藤公哉)
製作:まつもとフィルムコモンズ
支援:信州アーツカウンシル(一般財団法人 長野県文化振興事業団)
後援:松本市教育委員会 令和5年度文化庁芸術創造拠点形成事業
東京ドキュメンタリー映画祭2023 入選


音楽
3日満月
権頭真由、佐藤公哉による音楽家デュオ。ピアノやヴァイオリンなどで映画、舞台の音楽を手がける。
「まつもと日和」を観るには
NEW!
アイシティシネマでの3週間限定上映(2025年3月28日〜4月17日)が決定!!
https://www.inouedp.co.jp/icitycinema/schedule/
上映会が決定しましたら、随時こちらのページに記載してゆきます。
市民上映会を開催してくださる団体(町会、公民館、商店街など)や個人、
施設、学校の方を募集しています。
ご自宅で何度も見たい、ご家族と見たいというかたは、
動画配信サイトvimeoにてオンライン配信中ですので、ご利用ください。
コメント
現代において地域の記憶や記録とどのように向き合うことができるのか
大石始
『まつもと日和』を観た。最初に書いてしまうと、これが実に素晴らしい作品であった。
現代において地域の記憶や記録とどのように向き合うことができるのか。本作はそうした問いかけを投げかけている。
松本にかぎらず、分厚い市史に載っているのは歴代の市長や大企業の社長ばかりだし、語り継がれるのは有名な将軍の武勇伝や地元の名士の成功譚ばかりだ。でも、同時代に生きているのはそういった名前のある人たちばかりではない。何気ない街の風景を映した8ミリフィルムの映像は、名前のない人々の小さな物語が存在していたことの証でもある。
ただし、当時を知る人々だけでこうした古いフィルムを観ても、ノスタルジーたっぷりに昔を懐かしむだけで終わってしまうだろう。この映画では劇中、さまざまな世代がフィルムを共に鑑賞する場面が出てくる。子供や若者は現在とは異なる松本の風景に驚き、老人たちは懐かしむ。現代に生きる人々がそうやって語り合うことにより、地域の物語が繋ぎ直されていくのだ。
一度記録された地域の物語を編み直すことで、その可能性を開く。あるいは混沌とした記録と記憶の渦をエディットし、リミックスやリマスタリングを施すことで、複数の「小さな物語」をアーカイヴする。『まつもと日和』がやっているのは、そういうことだと思う。
もちろん、東京の「リミキサー」に頼めばすぐにうまいことフィルムを繋ぎ、感動的なドキュメンタリー映画を仕立て上げてくれるだろう。でも、『まつもと日和』の場合はわざわざ幅広い世代の市民が参加し、模索しながらひとつの作品を作り上げていった。かつてこの地に生きた人々の物語を、現在ここに生きる人々が「自分たちの物語」として作り上げていくというプロセス自体にも重要な意味があるはずだ。
(noteの投稿「地域の物語と記憶をつなぐもの——地域映画『まつもと日和』を観て」より抜粋)
大石始
地域と風土をテーマとする文筆家。最新刊は『異界にふれる ニッポンの祭り紀行』。