信州アーツカウンシル野村政之さんより、ご寄稿いただきました!


まつもとフィルムコモンズ「松本の8mmフィルムを救済し、地域映画としてよみがえらせたい!」クラウドファンディング、目標達成おめでとうございます。

あと1週間ほどのラストスパートで、より多くの方が支援という形でこのプロジェクトに関わってくださることを、そしてこの取り組みがもつ意義を分かち合ってくださることを、私も期待しています。


去る8月20日(土)、まつもとフィルムコモンズで定期的に開催している上映会「8mm映写室」に参加して、2020年度に製作された「浦賀の映画学校」を鑑賞しました。

スクリーンに映し出される、造船で栄えた頃の海辺の街・浦賀。
市井の撮影者たちを惹きつけた新しい船の進水式の光景は、その時代その地域に暮らしたことのない私のような者にも「繁栄」を印象づけ、懐かしさと感動を呼び起こします。
同時に8mmはホームムービーであり、運動会とか何かの記念とか、親の目線から子どもの成長に目を向ける映像がたくさん収録されています。

地域の年配の方々にとっては子ども時代や若い頃の思い出であり、今の子どもたちにとっては時を越える扉であり窓であり、地域の歴史に関心を向けるきっかけとなる。

そして「浦賀の映画学校」がとりわけ素晴らしいと思うのは、映画製作のプロセスに子どもたちが参画し、それを通して子どもたちの主体性が引き出されていることでした。

創作の一環として地域の異世代の人たちに話を聞いたり、昔の映像に効果音を加える作業に携わったりして、かつての浦賀を自ら想像し、自らの地域を描く映画を自らの感性で描き、その魅力を伝える。

子どもたちがこの機会から自分の手応えを得ていることがビシビシ伝わってくるのです。

自己効力感、自己肯定感、非認知能力、チームでやり遂げる力・・子どもの学びに関して昨今よく使われるキーワードですが、リサーチ、講座、創作が絡み合ったプログラムとして、いま〜今後まさに求められる種類の「学び」と「アート」の連動に結実しているのを見た思いです。

このような取り組みが、全国各地で行われることを願います。
また、私の仕事は文化芸術の担い手のみなさんを支援することなので、自分の役割としても努めていきたいと思います。

また、当日は8mm映写会のあと、同じ会場で夜に関係者のみの上映会がありました。
松本市出身の山崎貴監督が中学生時代に初めて撮った映画作品を、この映画の製作に関わった同級生ほかの皆さんが集まって鑑賞したのでした。
この映画のフィルムは長い間行方がわからなくなっていたのですが、今回の活動がきっかけとなって、保管されていたのが発見されたのです。

このようなことが起きるとは、誰も想定していませんでした。大発見です。
現在までの山崎貴監督の業績の出発点といえる作品を、多くの人と分かち合うことができる、これは大きな価値です。山崎監督を育てた郷里・松本にとっての文化的な財産が掘り起こされた、といえると思います。

そして、このプロジェクトは、地域映画が完成した後も、長く取り組みの余韻が続きます。
毎回の8mm映写室では、10代から70代,80代までの人たちが、それぞれ自分の感想を語り合うことができる。地域映画が世代を越えた交流の媒介になっています。

松本は三好大輔監督の在住地でもありますし、映画が出来上がった後、上映会などの取り組みのなかで、さらに新しい何かが始まるような気もしています。

今は、ぜひ皆さん最後まで、クラウドファンディングの門が開いているうちに、支援をお願いします!
そして地域映画の取り組みの新たな可能性が切り拓く試みに伴走して、そこから学び合いましょう。

最後になりますが、私が仕事をしている「信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)」は、まつもとフィルムコモンズの地域映画製作のプロジェクトを支援しています。資金的な支援に加えて、活動が持続していくように、まつもとフィルムコモンズの皆さんに伴走しています。今年度からこうした取り組みを始めまして、ほかにも長野県内の文化芸術の取り組みを20件支援しています。お見知りおきいただけますと幸いです。

※信州アーツカウンシルについては、こちらをご覧ください → https://www.culture.nagano.jp/special/7752/

野村政之(信州アーツカウンシル ゼネラルコーディネーター)